奈良県橿原市議会3月定例会 総務常任委員会 参考人意見録より

奈良県平和委員会代表理事 紺谷日出雄の意見陳述

2006323

●紺谷参考人 ご紹介いただきました紺谷でございます。三郷町の診療所に勤めております。まず始めに、平素、橿原市民の安全の確保と向上のため、ご尽力をなさっておられる市議会並びに市当局の皆様に敬意を表したいと思います。

私はおよそ5つの点にまとめて、意見を述べさせていただきます。ただ、以下「奈良県国民保護計画」を保護計画と略称し、そして「武力攻撃における国民の保護のための措置に関する法律」これを保護法と略称させて、続けさせていただきます。

5つの点のまず1番目は、保護計画と有事法制の関係についてであります。ご承知のとおり保護法は、有事法制の中の「武力攻撃事態法」に従って制定ざれました。その保護法第35条は、市長が県の保護計画に基づいて、市の保護計画を策定しなければならない、とされております。

ところで武力攻撃事態法では、海外における自衛隊やその船舶に対して、どこかから武カ攻撃をされたとき、あるいは直接攻撃がなくても武力攻撃が予測されたとき、それは我が国に対する武カ攻撃事態とみなすとされております。そしてその事態を排除するために、自衛隊が武力行使することも否定はしておりまぜん。またその際、自衛隊が米軍と協カして、軍事的対処する可能性も否定はできません。

こういう事態は海外ではありうることとして、考えておかねばならないと思っております。こういうことは、この間の日米同盟という、その日米両政府の動きの一連の推移をみても、理解できると思います。すなわち1997年の日米軍事協カの指針、いわゆる新ガイドライン。それから1999年の周辺事態法、2003年と2004年の有事関連法の3つの法律と、それから武力攻撃事態法に関連した7つの法律で制定されたと。そしてまた200510月、日米安全保障協議委員会いわゆる2+2(ツープラスツー)というのですけれども、ここの中間報告が出されまして、この中間報告では、アメリカの先制攻撃戦略、それに自衛隊が米軍を補完する役割を果たすというふうにされております。また今年2月に発表されましたアメリカの国防計画の見直し、いわゆるQDR(キューディーアール)4年毎の見直しですけれども、そこでは地球各地の紛争地点に急速に兵カを集中ざせる。そして危機の予防的な行動を行うと先制攻撃戦略を強調しているわけです。

これを受けて米軍の再編制と米軍と自衛隊との軍事協力体制作りが今、進められているのは皆さんご存知だと思います。また、これよりも先に200412月には、新防衛計画大綱および中期防衛力整備計画いわゆる中期防ですね。そこでは海外派兵を自衛隊の本来任務とすると、今までイラクなどに派遣していたのは自衛隊の本来任務ではなかったのです。その他の任務ということになっていたのですけれども、本来任務は国土の防衛と災害救助、それに今度は海外派兵が本来任務と、それから緊急展開の可能な中央即応集団これを編制する。それから海外遠征のための装備を重点強化する。こういうことがこの防衛大綱と中期防に盛り込まれました。

このような一連の状況の進展する中、すなわちアメリカの先制攻撃戦略とそれに協カする自衛隊の海外派兵によって、海外ではあるいは生じるかもしれない非常事態、そういう非常事態に対応しなければならないと。そのための国内体制の整備すなわち戦時体制づくり、こういうものがやられようとしている。保護法はこういう中での位置づけられるものだと考えなければならないと私は思っております。

そういうことで保護計画は単なる防災計画ではなくて、このような一連の法律、外の関連あるいはこのような日米軍事同盟の進展の状況とのその関連で、この保護計画を捉えることが大事だと思います。そのことを念頭において考えていただきたいとお願いする次第です。

次に2番目には我が国に武力攻撃事態が発生する可能性といいますか、現実性についてであります。さきほど申し述べましたような海外での事態のほかに、我が国、我が国土に直接加えられる進攻によって武力攻撃事態が発生する、そういう可能性あるいは現実性が果たしてあるのかということであります。

これにつきましては、昨年の防衛大綱でも、我が国に対する本格的な侵賂の可能性は低下していると述べております。また小泉首相は我が国に脅威を与える特定の国を想定しているわけではありません、とこういうふうにおっしゃっておられます。私も現実に日本の国土に対して、保護計画が言っておりますような想定される4つの類型での攻撃が、我が国に行ってくるような国は、存在しないだろう考えております。

今日の国際杜会において、現実にどこの国がいかなる意図、いかなる目的、いかなる動機をもって進攻してくるというのでしょうか。日本に進攻して占領して、いったいどんな利益があるのでしょうか。今日アジア諸国は、日本と友好的に経済協カ、文化交流をすることにメリットを見出しことすれ、武力侵攻によって何かすることができると、そういうことを考える国はございません。一部不可解な国もありますけれども、しかし、日本に上陸進攻するような、あるいは占領するような、そういう意志はないでしょう。もちろんそのような能カは全く持っておりません。もし仮にミサイルや航空攻撃等、仮にやったとしたら、それこそたちどころに自国の体制が崩壊してしまうということは明らかでありますし、彼らもよく知っているだろうと思います。

ところが保護法と保護計画ではこのことの具体的な可能性については、まったく説明がなされておりません。保護計画第2編、第5章では、住民が国民保護に関する正しい知識を身につける、そのために啓発を行うとしております。しかし今申しましたような非現実的な想定のもとで具体的な進攻の可能性も説明できないで、どうして正しい知識の啓発等できるでしょうか。また防災避難の訓練を行うとしてすけれども、このような全く仮想の敵に対して、備え有れば憂いなしといって啓発や訓練を行うことは、いかにも我が国に対する脅威が差し追っているかのような不安感を国民に起こさせて、それがひいては戦時体制作りの誤った方向に世論を誘導することになりはしないでしょうか。私そのことを恐れます。さらに学校において、安全教育や対応能力育成のための教育を行うとしておりますけれども、漫画やゲーム機の架空の世界のような、どこかの国が攻めてくるかもしれないと幻想を子どもたちに抱かせるのではないでしょうか。教育にとっては誠に有害だと思います。

それから3番目は、保護計画の実効性、実際にはどれほど役に立つのかということであります。保護計画の第15章では、武カ攻撃事態として以下の4類型が対象として想定されるとして、着上陸進攻、ゲリラや特殊部隊による攻撃、弾道ミサイ/レ攻撃、航空攻撃、この4つをあげております。また特殊な対応が必要な核兵器、生物もしくは化学剤を用いた兵器による攻撃、いわゆるNBC(エヌビーシー)攻撃といいますけれども、こういうことをあげて、それらの留意点について記述しております。

少しあげてみますと、核兵器については「風下を避け、手袋、帽子、雨合羽等によって放射性降下物による外部被爆を抑制する」とこういうふうになっております。しかしこんなことで被爆を防げるというのは、まさに常識はずれだと思います。広島、長騎の被爆あるいはビキニ水爆実験の死の灰、あるいはチェルノブイリ事故の、そういう実態をまったく無視するがごとき暴論であります。

また安定ヨウ素剤の服用等により、内部被爆の低減に努めるとしていますが、これは放射性ヨード1131ですけれども、これの甲状腺への影響を薄めるだけのものです。たとえていいますと水をいっぱいに飲んで胃袋をあらかじめパンパンにしておいて酒を飲むというようなことですね。なんぼも飲めませんし、飲んでも水でうんと薄くなるという考え方で、しかもこのヨウ素剤の服用は、被爆する直前か直後に飲まないと全く効かないのです。何時間も経つてから飲んだのではだめです。それからこういう放射性物質にはヨード以外の例えばセシウム137とか、ストロンチウム90とか、そういうたくさんの放射性物質とかありますけれども、そのようなことにはこのヨウ素剤はまったく無効です。まあ、あたかも何か特効薬があるかのごとき誤解を与えるものではあります。

生物兵器については感染源の特定といっていますけれども、これには何日もかかる検査を要します。それから汚染地域の特定といいますけれども、これにはさらに日時を要します。まあその間に感染はずっと広がってしまうでしょう。ましてや必要なワクチン接種を行い…と、これにいたっては、ワクチンをうってから免疫獲得までには3週間から4週間が要るわけです。とても間にあわない。第一あらかじめどのような菌か、菌種を予想してそのワクチンを製造し、予防接種を行って、とこのようなことはおよそ不可能です。

化学兵器についても、原因物質の特定は非常に難しいですし、物質に応じた除染や救急医療の実施は大変困難な間題です。要するにこの留意点で述べられている指針は、およそ非科学的で国民の安全を守る上ではまったく実効性、実際の役には立たないものだといわざるをえません。

34章第4では避難の実施要領が述べられておりますけれども、そこでは消防庁が作成したマニュアルを参考に、あらかじめ作成したいくつものパターンが、的確かつ迅速に避難実施要領を作成しろとしております。避難先や避難手段やおよび避難経路など、12項目の留意事項をあげております。しかし想定される武力攻撃が具体的にどのような方法で、どんな規模で行われるのか。時間的、空間的にどうなのか。それが特定されなければ、具体的な避難実施計画等は立てられないではありませんか。そもそもこの12項目に従って橿原市民12万人余り、この多くの方を避難させることは到底不可能であります。避難先をどこに確保するか。避難の手段をどうするか。避難の経路をどこにとるのか。一例を申しますと、2003年鳥取県でシュミレーションを行いました。鳥取県の石美郡の住民2万人を隣の兵庫県に避難させるのに90台のバスで11日間を要したという計算になったということです。

それからまた避難移動する住民とこれから戦闘に向かう自衛隊とは、反対方向に交錯するわけです。当然そういう場合は自衛隊の行動が優先されますから、避難住民は邪魔になりますし、そこで大混乱が必至です。それから第212節には、自主防災組織の充実を図るとともに訓練の実施を促進し、消火、救助のための設備の充実に努める、とありますけれども、私の戦争中の体験からしても、いざというときにはまったく役に立ちません。

実は私は大阪に住んでおりまして、大空襲にあいまして私の家も焼夷弾で全焼しました。その時の様子です。前から隣組でいろいろ訓練をやっておりました。バケツリレーだとかですね。それから家々には防火水槽。風呂の浴槽の半分ぐらいの水槽を置いたり、それから、「したたき」というのですか。竹の先に縄の束をくくったような、ちょうど挨たたきの親玉のような、これに水をつけて火を叩いて消すというのですね。男の人は梯子に上って火を消す馴練ですね。女の人はバケツリレーを散々やっておりましたけれども、実際の空襲のときにはそんなものぜんぜんやれなかった。まったく役に立たなかったということでございます。いかに実効性のない現実的でないということがわかると思います。

33章第3には「知事は必要があると認めたときは、防衛庁長官に対し、自衛隊の部隊等の派遣を要請する」とあります。「なお自衛隊はその主たる任務である侵略を排除するための活動に支障を生じない範囲で、可能な限り…」とこういうふうにされております。実際間題として侵略排除の差し迫った状況下では、自衛隊が国民の保護の要請に応じることができるとは、とても思えません。そもそも自衛隊にそのようなことが期待できるのでしょうか。これについては、先に大戦中、軍隊は沖縄では住民を邪魔者扱いにして、死に追いやりました。また旧満州では、邦人を見捨てて真っ先に軍が退却して、邦人を悲惨な目にあわせたではありませんか。これが軍隊の本質であると知らなければならないと思います。

さて4番目は、国民の権利侵害にていてであります。ちょっと時間が急ぎますけれども、保護計画第12章には、国民の自由と権利に制限を加えるときであっても、その制限は、必要最低限のものに限りとあります。しかし保護法のほうでは、強制によって一部罰則を設けて権利を侵害する場合があることが定められております。また改正自衛隊法にも土地家屋の強制収用の項があります。

憲法第11条には、この憲法が国民に保障する基本的人権は犯すことの出来ない永久の権利としてと規定しております。戦時立法によって、保護計画のような、この権利が制限される余地は、憲法上存在しえないと考えます。保護法81条では、救援に必要な物資の売り渡しを要請し、これに応じないときは収用するとなっています。また82条では要請に応じないときは、土地、家屋等を所有者の同意を得ないで使用することができるとしております。また189条は物資の保管命令に従わず隠匿したり、搬出したした者には、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金に処すとしておりますし、190条では警戒区域への立ち入りを禁止し、退去命令に従わなかった者は、罰金または拘留に処すとしています。住んでいる家から追い出されることもありうるわけです。これらは憲法22条居住移転の自由、29条財産権に著しく抵触するものであります。ちなみに1951年の改正土地収用法を制定した際に、国防目的のための土地の使用や強制収用は、憲法に抵触する疑いが強いとして削除されたという経緯があります。

最後に5番ですけれども、こういうような事態に至らないようになすべきことは何かということであります。先に述べましたように我が国に武力攻撃を加えるような国は、およそ存在しえませんけれども、何よりも大切なことは、そういう事態を想定しなくてもよいように、我ヵ国の政府が懸命の努力をすることであります。

ご承知のように昨年12月に東アジア首脳会議が開かれました。会議に参加した国はASEAN(アセアン)10カ国と日中韓そしてインド、オーストラリア、ニュージーランドの16カ国であります。この会議に参加する資格はですね、東南アジア友好協力条約、いわゆるTAC(タック)ですね、TAC(タック)に加盟していることであります。もちろん日本も加盟しております。TAC(タック)は武力行使の放棄といった紛争の平和的解決、これを中心とした友好協カと不戦の誓いであります。

日本はこのTAC(タック)の精神を尊重して、アジアの平和に貢献し、アジア諸国の友好協カとその発展に尽くすべきであります。アメリカと軍事協カを強めたり、また憲法の平和条項をつぶすようなことをするのは、東アジアに緊張をもたらすし、TAC(タック)の精神に反することであります。我が国は先の戦争で、多大な苦難を与えたアジア諸国の信頼を取り戻すために、もっともっと外交努カをすべきであって、これに水をさすような首相の靖国神杜参拝とか、侵略を正当化する歴史教科書や政治家の言動、これは厳に慎まなければならないと思います。

以上の5つの諭点に鑑みまして、私は国民保護計策定およびこれに関連する今回の2つの条例案については、議会で慎重の上にも慎重を重ねて、ご審議をいただきたいと。できうれば反対していただきたいと切に願うもあります。なお高知県の大月町におきまして、この316日の町議会で国民保護計画のための二つの条例案を反対多数で否決しております。また昨日22日には、土佐市議会でこの二つの条例案は継続審議となりました。それは現議員が任期切れになりまして、結局、2条例案は廃案になったということであります。このことをひとつ申し伝えておきます。どうもたいへん舌足らずな論述を長い時間ご聴取いただきまして、ありがとうございました。

●小川委員長 ありがとうございました。以上をもちまして紺谷参考人の意見陳述は終わりました。

委貞各位に申し上げますが、質疑はただいまのお聞きになりました説明の範囲内でお願いしたいと思います。それでは、ただいまの意見陳述に対する質疑を行います。

●奥田副委員 奥田と申します。よろしくお願いいたします。今のいくつかの論点について、若干感じ方の違うところがありますのでお伺いいたします。

私の気持ちも交えて申しますと、平和主義的なふるまいを行っていくことによって、リスクを低減していく、小さくしていく施策それ自身はわかる思いがするのですね。また大規模な空襲とかそういう大きな武力攻撃の可能性が非常に低いということも言えるかと思います。まあそういう大規模な攻撃を受けたときに、実際に具体的に丁寧に対応できるような内容なのかというと、これも非常に危ないなという部分も同意できるかなと思っておうます。

ただですね。あえてそこの部分は私の感じ方でいくと論点がずれているのですね。といいますのは、大規模な攻撃よりもむしろ特殊な知識、今まで一握りの人しか知らなかったような特殊な知識がインターネット上で流れて、誰でも手に入れるようになってきたことによって、小さなテロが、局地的なテロがあちこちでおこるようになっておって、この実際の可能性というのは非常に高くなっているという風に感じるからでございます。いわゆるサリン事件でありますとか、そういうのは端的な例ですね。一部の研究者しか知らなかったような情報が今や一般の誰でもが、手に入れることができるようになって、何人かが集まったらすごいテロをおこすことができるようになっているこの時代ですね。そういう小さなテロに対して対処する法律とか、そういうものはリスクに対処する考え方として、持っておくべきではないかと思うのですね。

ですからあえて私自身の感覚では、大きな災害に対応するよりも、むしろ小さな災害に対応するための、たぶんこういう平和主義と国民保護条例というのは対立的なものではなく、むしろ両立的なものとして必要なのではないかなと思うわけです。そのへんの私との感じ方の違いにつきまして、ご意見がありましたらよろしくお願いします。

●紺谷参考人 そうですね。そういう非常に特殊なテロのような事件というのは、ありうるかもしれませんけれどもね。ひょっとしたらね。非常に可能性としては低いと思いますけれども…、ありうるかもしれませんけれども…。それは、どこかの国による侵攻というよりも、ある犯罪集団ですか。それは国際的な犯罪集団かもしれませんけれども、あるいは国内の集団かもしれませんけれども、いわゆる犯罪集団による犯罪だというふうに思いますね。これは自衛隊だとか、あるいはそういうふうなものに要請をお願いして、するようなことかというと、ちょっと私にもよくわからないのですけれども、むろん警察の掌握する範囲だと、あるいは国際的な警察を使ってということになりますけれども…。武力攻撃事態法だとか、それに応じた保護計画なんかでするようなことなのかどうかは、ちょっと私はわからないのですけれども、少しまた別の問題ではないかなというふうに思います。ちょっとあまりちゃんとした答えになっていないかもしれませんけれども、私の考え方としては、そういうふうに思っております。

●小川委員長 答えられる範囲で結構でございます。

●紺谷参考人 なかなか特殊な問題がいろいろありますとね。

●小川委員長 以上で、参考人、紺谷さんに対する質疑は終了しました。紺谷さんにご挨拶申し上げます。本日はご多忙にもかかわりませず、当委員会にご出席を賜り、貴重なご意見をいただき、感謝申し上げます。委員会中に述べられました貴重な意見につきましては、今後の委員会審査の参考にさせていただきたいと思っております。本日は誠にありがとうございました。

●紺谷参考人 どうも、ありがとうございました。