声明 

陸上自衛隊の五条市誘致に断固反対する


 陸上自衛隊の駐屯地を、奈良県五條市に誘致しようとする計画がすすめられている。五条市の3月議会において、五条市への「陸上自衛隊誘致決議」が決議され、その後5月22日に五条市の市長と議長、五条市選出県会議員が奈良県知事に、五条市に陸上自衛隊を誘致するための協力要請を行い、知事は積極的支援を約束したと報道されている。
五条市の市長らは「災害時など地域住民の生命と財産を守り、安全安心なまちづくりを進める観点から、また地域活性化の点からもぜひ誘致に協力を」と述べたと報道されている。しかし、これは現在の自衛隊の実態とあまりにかけ離れた認識であるといわざるを得ない。
私たちは、自衛隊は憲法違反の軍隊であると考えているが、今の自衛隊の実態は政府の言う「自衛のための必要最小限の実力」という言い分からもはるかに離れた実態になっている。自衛隊は年間約5兆円もの軍事費を使い、日本防衛とは無縁の、ヘリ搭載護衛艦や90式戦車、イージス艦などの最新兵器を装備し、世界で有数の装備を持つに至っている。
しかも重大なことは、自衛隊の中心任務が、アメリカと共に海外で戦争する海外派兵任務になっていることである。2006年末に成立させられた防衛庁の「省」昇格法によって、防衛庁は防衛省となり、これに伴う自衛隊法の改悪で、海外派兵が自衛隊の本来任務に格上げされた。陸上自衛隊を海外派兵するために、その計画・訓練・指揮にあたる中央即応集団司令部を、朝霞駐屯地から米軍キャンプ座間に移転させようとする計画もすすんでいる。これは、在日米軍再編計画でキャンプ座間に移転する米陸軍第一軍団司令部と連携して、自衛隊の海外作戦を指導する司令部にしようとするものである。「弾道ミサイル防衛」(MD)計画も、日本を在日米軍基地と米本土を守る盾にし、アメリカが反撃を心配しないで、世界で先制攻撃戦争をおこなえるようにするための戦略にすぎない。
このように現在の自衛隊は、日本防衛とは無縁で、アメリカの無法な先制攻撃戦争を支援する、従属的なアメリカ軍の補完部隊であることがますます明白になっている。
現在すすめられようとしている憲法「改定」のねらいは、9条2項を撤廃し、「自衛軍保持」を明記することにある。それは「集団的自衛権行使」を可能にし、日本をイラク戦争のような無法な戦争にアメリカと共に参加する、「戦争する国」にしようとするものである。
さらに安倍内閣は、集団的自衛権の解釈変更を検討する「有識者懇談会」を設置し、解釈改憲によって集団的自衛権行使を可能にし、現在の憲法のもとでも、アメリカの戦争に日本を参加させようとする策動をおしすすめている。
しかも、自衛隊の強化、米軍との一体化をすすめ、世界規模でアメリカの戦争に参加する国づくりをすすめている中心勢力は、安倍首相をはじめとする侵略戦争無反省の「靖国派」である。かれらは、教育基本法を改悪し、その具体化として今国会に「教育三法」の改悪案を上程し、すでに衆議院を通過させている。そこで狙われているのは「愛国心」教育の押し付けである。このような「戦前回帰」の動きが同時に進行していることは極めて危険な動きである。
そのうえ政府は、5月18日からはじめた沖縄県名護市に米軍の新基地を建設するための「環境現況調査」に海上自衛隊の掃海母艦「ぶんご」を投入するという暴挙を行った。自衛隊は法的根拠がなければ動いてはいけない武装組織であるにもかかわらず、政府はなんの法的根拠も示さないまま自衛隊を投入し、アメリカの要求に従ってなりふりかまわず新基地の建設をおしすすめようとしている。このようなことを許せば、全国どこでも米軍や自衛隊の施設建設に住民が抵抗した場合、自衛隊が投入されることになってしまう。自衛隊は今日、平和を求める国民の運動を威嚇し押さえつける実力部隊となっている。
以上のような点で、現在の自衛隊の実態が、五条市の認識とはまったくかけ離れた危険なものであることは明白である。このような自衛隊を「地域活性化」のために誘致することは許されないと考える。直ちにこのような計画は撤回すべきである。
今すすめるべきことは、アメリカのいいなりになって自衛隊を増強することではない。日本国憲法の立場で、積極的な平和外交をすすめ、世界有数の軍事費を削り、暮らしや福祉にまわすことこそ、地方の活性化につながると考える。
奈良県平和委員会は、自衛隊の基地を県内に新たに建設することに断固反対する。組織の総力をあげ、広範な県民世論に訴え、自衛隊の県内誘致を断念させるまでたたかうことを表明する。
                   2007年5月31日  
奈良県平和委員会代表理事 紺谷日出雄
寺中正昭